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MOJALAND / 青空の裏がわひろがりとどきかた の続き

青空のわすれもの

忘れようとしても思い出せない

Bluesky やその周りのサービスに「こういう機能があったらいいのに」と思うことがある。たいていの場合、それはもう誰かが言っている。言った記録も残っている。ただ、作られていない。

この文書は、そういうものを並べたものになる。案は discourse.atprotocol.community から採った。「青空のひろがり」でいま動いているサービスを51件並べたが、こちらはその裏返しだ。一度は提案されて、まだ誰も作っていないもの。

読み方は二通りある。上から順に読むと、この空で物がどう落ちるかが分かる。各項目の下にある細かい欄は、作る人向けだ。読み飛ばして構わない。

1

誰が決めているのか

先に一つ書いておきたい。

ふつうのSNSでは、新しい機能を決めるのは会社だ。要望を送っても、採用するかどうかは向こうが決める。この空では、決めているのは「やった人」になる。

投稿の形を決める設計図をレキシコンと呼ぶ。これは誰でも作って公開できる。フィードも、判断の層も、誰でも建てられる。許可は要らない。

だから足りない機能があるとき、原因は「会社が採用しなかった」ではない。誰もやらなかった、だけだ。

2

種でも土でもない

案が足りないのではない。集めただけで52件ある。環境が悪いのでもない。誰でも作れて、誰の許可も要らない。

足りないのは二人目だ。

投稿の形を一人が決めても、それはその人だけの書き方でしかない。二人目が同じ形で読んで、初めて共通の形になる。閾値は二だ。

実際、動いたものは全部そこを越えている。

何人で始めたか結果
ブログの共通形式競合するブログ三社が同じ卓で動いた
バッジ三人が同じ卓で動いた
自分で持ち運ぶ代名詞一人が作り、一人が褒めた止まった
みんなで作る曲の並び一人止まった
二択で書くレビュー一人止まった

だからこの文書の狙いは、案を配ることではない。二人目を募ることだ。

一人目になるのは重い。設計から考え、実装し、他人を説得することになる。二人目は軽い。設計はもう出ていて、一人目が待っている。

この閾値が厳密に効くのは「投稿の形」を決める層だけだ。フィードは一人が作れば動くし、判断の層は作る人より購読する人の数が要る。52件の過半が前者なので主張として立つが、全部に当てると外れる。

3

止まり方は四つしかなかった

52件を読んで分かったのは、案の中身より止まり方のほうが揃っているということだった。

1

誰も読まなかった。返信ゼロのまま沈む。反対されたのではない。

2

褒められて終わった。いちばん多く、いちばん見えにくい。合意が採用の代わりになってしまう。

3

置き場所の話へ逸れた。「それはその仕組みでやることではない」と言われ、別の仕組みの議論になったまま戻ってこない。

4

二人目が来たのに、合流路が無かった。「一緒にやりたい」まで来て止まる。二人が同意した次に何をするかが、誰にも決まっていない。

以下、型ごとに実例を置く。大きい一行が中身で、その下は作る人向けの欄になる。

型 1

誰も読まなかった

みんなで作る曲の並び

何人かで一つのプレイリストを作って、「この曲を入れたのは誰か」が残ったまま、全員の持ち物であり続ける。

レコード
現状
聴いた曲の記録は Rocksky が個人単位でやっている。複数人で一つの並びを作る形は無い
空いている点
参加者ごとの持ち分を保ったまま共有される並び
必要なもの
曲を指す条件と、参加者の書き込み権。いちばん重いのは技術ではない。本体を誰の PDS に置くかの決めごとだ
効き方
運営が配るプレイリストの逆になる。作った人たちの手元に残る
止まった理由
2026-02-20 提案、返信ゼロ、閲覧90。反対も賛成もされていない
出所
discourse「Cooperative playlists」(@tokono.ma)

型 2

褒められて終わった

自分で持ち運ぶ代名詞

自分の呼ばれ方を、アプリの中ではなく自分の側に置く。アプリを替えても、誰かがサービスを畳んでも、消えない。

レコード
現状
Bluesky にプロフィールの代名詞欄はあるが、その値は Bluesky のプロフィールの中にある
空いている点
独立したレコードとして自分のリポジトリに持ち、どのアプリからも読める形
必要なもの
小さな設計図一つ。実装はもう書かれて公開されている
効き方
持ち主が変わらないので、道連れにならない
止まった理由
2026-02-17 に公開。翌日「これは素晴らしいし、まったく理にかなっている」と返信が付いて、そこで終わっている。否定されていない。採用もされていない
出所
discourse「I made a portable, user-owned pronoun lexicon for atproto」(@skydeval.nearhorizon.app)

この案が作られた理由が、そのまま別の問題を指している。提案者はこう書いている。「先週ラベラーが一つ消えて、多くの人がその機能を失った」。

作った人が止めた日に、機能が道連れになる。同じことは日本語圏でも起きうる。#青空ごはん部 は一日で200件を超える賑わいだが、あれは誰か一人が決めたタグに、その人が付けたフィードがぶら下がっているだけだ。

型 3

置き場所の話へ逸れた

注意書きの層を、案内に使う

いまは「危ないよ」と貼るためだけに使われている仕組みを、「ここから先がありますよ」に使う。

ラベル
現状
判断の層はほぼ全部が警告・非表示・年齢制限に使われている。肯定に使った実装が見当たらない
空いている点
ラベルに行き先を持たせる口。「これは○○についての投稿だ」と貼っても、そこから先へ進めない
必要なもの
ラベル定義に任意の行き先を足し、表示側がボタンを出す。貼る側の変更は小さい。重いのは表示側が対応しないと何も見えないこと
効き方
同じ仕組みのまま、貼られる意味が反転する。隠す係が案内する係になる
止まった理由
2026-05-02 提案。7-01 に「その用途にはこの仕組みは向かない、別の提案のほうだ」と返って停止。否定ではなく、行き先の議論に移って戻ってこなかった
出所
discourse「Labels beyond moderation」(@joe.germuska.com)

型 4

二人目が来たのに、合流路が無かった

漫画の共通形式

どのアプリで読んでも、続きが同じ場所から出る。ブログでうまくいったことの漫画版になる。

レコード
現状
縦読み漫画を載せるアプリが作られている。作品・話数・掲載の形が、作る人ごとに違う
空いている点
作品と話数を表す共通の形
必要なもの
技術は難しくない。重いのは誰が卓を用意するかだ
効き方
読む側はアプリを選べるようになり、描く側は一度置けば全部に載る
止まった理由
2026-05-04 に提案。三日後に別の開発者が「ぜひ一緒にやりたい、うちにも似た仕様がある」と応じた。そこで止まっている。二人が同意した次の手順が無い
出所
discourse「Comics Lexicons」(@bradestey.com、@dmathewwws.com)

この一件が、この文書の主張の証明になっている。二人目は現れる。合流路が無いだけだ。

拾った案の外側

まだ誰も言っていないもの

以下の三件は discourse に無い。Nighthaven が考えたものになる。三件とも CC0 とする。断りも連絡も要らない。黙って使っていい。

フィードの管理権を渡す CC0

部活を作った人が抜けても、みんなが登録した並びがそのまま動き続ける。

フィード
現状
#青空ごはん部 は8月14日の一日だけで200件を超えた。#青空旅行部 は週54件。どれも運営が作った機能ではない。誰か一人がフィードを作り、自分のアカウントの下に置いただけだ。タグは誰のものでもないので消えない。消えるのは並びのほうになる
空いている点
フィードの管理を別の人へ移す道。しかも同じ住所のまま
必要なもの
フィードの住所は持ち主のアカウントに紐づいている。持ち主を替えると住所が変わり、登録していた全員が繋がらなくなる。いちばん重いのはここだ。住所を保ったまま管理者だけ替える形が要る
効き方
人が作った場所が、人が抜けても残る。登録し直しを全員に頼まなくて済む
止まった理由
提案されたことがない。問題として書かれたのは観察記事の中だけだ
出所
Nighthaven(@moja.blue

自分の入口を自分で決める CC0

初めて来た人が、最新の投稿ではなく、自分が見せたいものから読み始められる。

レコード
現状
プロフィールを開くと最新の投稿が出る。Bluesky には固定投稿があるが、一件だけで、しかも Bluesky のプロフィールの中にある。ほかのアプリには届かない
空いている点
自分の代表作を数本、アプリをまたいで指す形。Bluesky の投稿でも、ブログの記事でも、コードの置き場でも、写真でもいい
必要なもの
住所を数本並べるだけの小さなレコード。実装はこの文書の中でいちばん軽い。重いのは読む側だ。一人が置いても、読むアプリが無ければ何も起きない
効き方
時系列に埋もれた良いものが入口に戻る。「青空のひろがり」で並べた51件に散らばった自分の仕事が、一箇所から辿れる
止まった理由
提案されたことがない。近いものに Universal profiles on the open social web があるが、あれはプロフィール自体を一つにする話で、自分の作物を指す話ではない
出所
Nighthaven(@moja.blue

この一件は、この文書の主張そのものの見本になっている。一人が置いても何も起きない。二人目が読んで初めて効く。実装は一晩で終わる。難所は全部、二人目の側にある。

上にだけ動く顔 CC0

その日の自分の書きぶりに合わせて、自分のアイコンの表情が変わる。

レコード(プロフィール画像)
現状
プロフィール画像は手で替えるもので、置いたら止まっている
空いている点
画像を差し替えて保存するだけの仕組み。だから公式アプリを含む全部のアプリに映る。読む人に何も要求しない
必要なもの
表情の絵を先に何枚か用意しておけば、推定は十段階に丸めるだけでいい。計算はほぼ要らない
効き方
置いたまま忘れていても、その日の調子が顔に出る。自分がいちばんよく見る画像だからだ。ただしプロフィール画像は公開なので、他人にも同じものが見える
止まった理由
提案されたことがない
出所
Nighthaven(@moja.blue

設計の条件が一つある。上には動かすが、下には動かさない。プロフィール画像は公開だ。沈んだ日に顔まで沈めば、自分の落ち込みを全員に知らせることになる。公開であることが、この非対称の理由になる。

言葉

この文書に出てくる言葉

レコード
投稿や設定など、自分の側に貯まる一件ぶんのデータ
レキシコン
そのデータの形を決める設計図。誰でも作って公開できる
フィード
投稿の並べ方。誰でも作れて、選んで入れかえられる
ラベル/判断の層
投稿に注意書きを貼る係。これも選べる

方法

限界

52件はわたしの絞り込みだ。網羅ではない。除いた基準(会議告知・ロゴ・基盤の話)が結果を動かしている

Discord と GitHub を見ていない。discourse.atprotocol.community だけを一次資源にした。機械で取れて、出所が書けて、読者が確かめられるからだ。案の多くは Discord で流れている可能性がある

「作られていない」の判定が弱い。discourse で止まっていても、どこかで実装されているかもしれない。見つけたら教えてほしい

数字は2026年9月3日時点だ

案内

どこへ行けばいいか

二人目になると決めたとして、次にどこを開くか。ここだけは具体的に書いておく。

1 同じものが既にないか確かめる。投稿の形は誰でも作れるので、同じ用途のものが別名で先に存在していることがある。ufos.microcosm.blue でネットワーク上に実在するコレクション名を引ける。名前が出てくれば、もう誰かが書いている。二人目になる相手が、そこにいる

2 止まっている卓を探す。lexicon-community が提案の本体だ。ここは63件ある。labelers-moderation は7件しかない。件数の少なさが、そのまま空きの大きさになる

3 卓に着く。lexicon.community が共同で形を決める場で、原稿は GitHub のリポジトリ にある。月例の集まり もある。合流路が無いと書いたが、ここだけは用意されている

4 書き方を確かめる。atproto.com の解説。設計図そのものは JSON 一枚で、自分のドメインの下に置くだけになる

二人目の最小の動作は、実装ではない。止まっているスレッドに「うちでも同じ形を使う」と一行書くことだ。それだけで、私的な書き方が共通の形になる。この文書で並べた七件のうち五件は、その一行を待っている状態にある。

結び

二人目になること

この文書には案しか書いていない。ほとんどは誰かが一度は言ったもので、わたしが考えたものではない。

一人目になれ、とは言わない。重すぎる。だが二人目は軽い。設計はもう出ていて、一人目が待っている。「うちでも同じ形を使う」と一言書くだけで、私的な書き方が共通の形に変わる。

前の三枚で書いたことがここに繋がる。この空は追加でしか勝てない。乗り換えを頼まず、すでにあるものの上に載せる。二人目になるというのは、その一番小さい形だ。